渦と橋のディープな世界を
オトナ目線で楽しむ
2018年に施設の大幅リニューアルを行い、デジタル技術を駆使した体験型ミュージアムとして生まれ変わった「大鳴門橋架橋記念館エディ」。
子ども連れの家族や、若者たちにとっても、よりポップに楽しめる現代風の施設としてパワーアップしている。
ウェブサイトやパンフレットには、「4K360°シアターawa」や「Play the Eddy!」など、デジタル技術に彩られた華やかなコーナーが大きく打ち出されているが、エディの真骨頂は「渦」と「橋」に関する緻密で膨大な情報量にある。
すべての展示コーナーを丁寧に見学しようとすると、少なくとも半日から1日の時間を要するだろう。
本州から現地へと向かう場合は、明石海峡大橋と大鳴門橋という2つの大きな橋をわたることになるが、エディでは1985年の開通当時、「東洋一の夢の架け橋」と言われた大鳴門橋の歴史や構造について深く知ることができる。
デジタルによって感覚的に楽しむアトラクション部分と、膨大な情報を分かりやすくまとめた展示部分。
この2つの要素を併せ持つのが、同施設の大きな特長と言える。
「渦潮」をモチーフに建設された館内をぐるぐると周りながら3階へ進むと、「凄いぞ!!大鳴門橋」のフロアへ到着。
大鳴門橋の歴史や構造などがコーナーごとに分かりやすく解説されており、実物大やミニチュア模型を見ながら、当時の日本の最先端技術を体感できる。
たとえば、全長1,629mにも及ぶ大鳴門橋は、橋桁の重さを2本のケーブルで支えている。
1本のケーブルは亜鉛のメッキ鋼線(こうせん)を19,558本束ねたものでつくられており、左右すべてのメッキ鋼線をすべてつなぐと、地球を1.7周もするそうだ。ケーブルの太さや断面図は、一際大きな存在感を放つ実寸サイズの模型で確認してみてほしい。
海面から144mの高さを誇る主塔(しゅとう)と呼ばれる部分も、耐久性やメンテナンスのための、さまざまな設計技術が施されている。
屋上や航空障害灯、エレベーターなど、説明文の横に設けられたボタンを押すことでランプが点灯し、その場所をイラスト上で教えてくれる。建設に興味がなくても、そのスケール感と、今まで知らなかった橋の裏側の世界に驚かされるはずだ。
大鳴門橋のほかにも、館内には世界的な橋や、四国三郎で有名な吉野川(徳島県)に掛かる橋や鉄橋など、さまざまな橋の解説コーナーが設けられている。
山紫水明に恵まれた日本の川、そしてその地域の生活を支えてきた「橋」の歴史や文化に想いを馳せれば、日常の風景がより豊かなものになるだろう。
ちなみに2階の「うずの詩」コーナーには、正岡子規や与謝野晶子など、日本の歴史を彩る歌人たちが詠んだ大鳴門海峡の詩が綴られている。当時の人々は、この海に大きな橋が架かるなんて思ってもいなかっただろう。
「橋」や「渦」のメカニズムを理解した後は、屋上の「パノラマ展望台」へ。
鳴門海峡や大鳴門橋を眼下に捉えながら、鳴門を独り占めしたかのような風景を360度ぐるりと見渡すことができる。すぐ近くに見える鳴門海峡大橋の景色も、今まで気づかなかった魅力に包まれているかもしれない。
ここまで来たらぜひ立ち寄ってほしいのが、徒歩約3分の場所にある「渦の道」。
新幹線が通る予定だった部分が遊歩道として整備され、眼下に渦潮を見下ろせるダイナミックな施設として人気を呼んでいる。
エディで学んだ「渦」と「橋」の知識が遊歩道の風景と重なり合い、渦の道の魅力がいっそうアップすること間違いなしだ。
渦と橋が織りなすディープな世界観を、オトナ目線でゆっくり楽しんでほしい。